最近多くの企業で人事評価の見直しが行われ、公平性を保つために人事考課制度を導入し始めています。
私の会社でも既に導入されているのですが、導入当時は何をどうしたらいいかわからず、抽象的な内容となっていました。
人事評価には大きく分けて2つの評価表の作成が必要で、業績などの数値を評価する業績評価と、個々の行動を評価する行動評価です。
業績評価は数値に基づいて評価をすれば良いのでそんなに難しくはありません。根拠となる数値の抽出も業績に関わるデータ年間を通じて常に管理しているので、難しくありません。これは皆さんも同じだと思います。
しかし行動評価は私にはとても難しいものでした。その理由は根拠となる行動事実の抽出が記憶に大部分を頼っていたからです。つまり根拠となるデータが曖昧で不確実だったからです。
結果として自分の評価表が抽象的なので、部下の評価も抽象的になり説得力に欠けていました。どうすれば公平で説得力のある良い行動評価ができるのかと試行錯誤の結果、毎日やっておくべき最も重要な事が分かりました。
同じように悩んでいる方はぜひ実践してみてください。
最も重要な事
結論からお伝えしますと、最も重要な事は、自部門、自身、部下各々の「行動観察メモ」を作成することです。
日々の出来事をメモをしておく事です。
最も重要な理由
私には10人の部下がいます。つまり人事評価表は10人分プラス自分の計11人分を作成しなければなりません。考課の時期が近づくと色々なデータや資料、自身の記憶を慌てて探って情報をかき集めます。
しかし短時間で1年間を詳細に振り返る事は凡人にはとてもできません。しかも強く印象に残っているのは、直近の出来事ばかりで、上半期、特に第一四半期の記憶はかなり曖昧で、詳細に思い出すことはできません。さらには前期の出来事との混同がよく起こる傾向にあります。
特に行動評価に関しては、「行動事実」を踏まえて行う必要があり、「事実」の蓄積がより意味のある人事評価へつながります。
このような理由から私は「行動観察メモ」が必要なのです。
行動評価の考え方
私は評価とは相手の欠点を探すのではなく、長所を1個でも多く見つけることだと思います。
その大事な長所を忘れないために備忘録として作成するのが行動観察メモだと思ってください。
たとえば、クレームが起きたという事実があった時に、クレームが起きたことを評価するだけでは不十分です。大事なのは5W1Hをもとに、
①クレームにつながった行動事実を評価する。
②クレーム対応の行動を評価する。
③クレーム解決後の行動を評価する
振り返れば単なるクレーム発生という事実にも少なくとも3個の行動事実が存在します。この行動事実をそれぞれ評価することで、プロセスと結果に対して、公平で説得力のある客観的な評価ができます。
クレーム関連の記憶は当時を思い出すと感情的になりやすく、人を評価しやすくなってしまいます。でもこれはNGです。
大事なのは「人」を評価するのではなく「事実」を評価することです。
人の思考は見えない?
人は目に見えるものしか評価が出来ない。だから数値化をして見えないものを見えるようにして評価を行うのだと思います。人の思考に関しても、どんなに素晴らしい思考を持っていても他人からは直接それを見ることはできません。
しかし、思考を目で見る方法があります。それは人の「行動」を見ることですで、行動は原則その人の思考に基づいて表現されます。つまり、思考=行動であり、その行動を評価対象にする事で人事評価は成立するのだと考えます。
メモ作りのポイント
ここまでで行動観察メモの重要性はご理解頂いたかと思います。ではそのメモはどのように作成すればよいのでしょうか?
答えは、どのようなメモでもOKです。
私が意識しているメモ作りのポイントをご紹介します。
①5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように・どうしたか)に基づくことです。
②部下の各々のメモと部署の出来事を月別に作成。
③自分のコメント欄を設ける
④自由記入欄を設ける
この4個のポイントを盛り込んで、エクセルにて作成しています。効果はメモを振り返った時にマクロとミクロの目線で当時の記憶が蘇ります。
メモの作成方法
良いメモの作成をするには、下記の3つを意識していけば良いと思いますので、ぜひ実践してみてください。
①行動事実の確認を習慣化する
まずは肝心の行動事実を見つけることが必要ですので、日常業務に於いて自分自身や部下に興味を持って向かい合ってください。そうする事で今まで何も感じなかった事が貴重な情報に変わります。これを習慣化させていきましょう。
②気がついたことはとにかくメモしておく
自分や部下の行動や日頃の仕事状況など、気がついたことをメモしておく。目的は、行動事実を記録として残して、評価時期に偏った行動事実に基づいた評価を避けるためです。決してラクな事ではないですが、日常的な行動事実のメモは公平な評価をするためには最も重要なものです。
③他者目線の情報も参考にする
自分目線の観察だけだと時には偏りが生まれる事もあります。それを補正する意味でも、時には周りの人の被評価者の印象情報を参考にしましょう。
ただし、あくまでも参考程度に捉え、自分の考えの補正材料に留めるくらいで良いです。最終的に事実に対する評価は自分自身が行う。
まとめ
人を評価するのではなく、事実を評価することが大事。そのためには行動観察メモの作成が最も大事。
行動メモあり➡公平性がある適正評価が出来る➡部下の信頼が上がり良いチームが出来る。
行動メモなし➡公平性に欠け適正評価ができない➡部下の信頼が下がり良いチームは出来ない。
出来る上司の条件は、自分自身や部下を平等に適正に説得力のある評価ができる人。
普段からしっかりと意識をして自分自身や部下に興味を持つことで、良いところがどんどん見つかる事に気が付くようになります。その結果お互いの関係性が驚くほど良好になり、強いチームワークを生みます。
そして今までいかに自分や部下の事を知らなかったのかを痛感します。でも実はこれが一番大事な事なのです。